2015-06-08

マーシュとパスコー:不振の犠牲者


マーシュとパスコーはリバプールの不振の責任を負わされた犠牲者

ブレンダン・ロジャーズは解雇を免れたようだが、メルウッドは見慣れた顔ぶれではなくなる。ファーストチームコーチのマイク・マーシュとアシスタントマネージャーのコリン・パスコ―が解任され、ロジャーズを守る人物がいなくなった。オーナー会社とロジャーズ、両者の合意あっての決断であると報じられているが、ロジャーズがこの状況を喜んでいるわけがない。

3年前の夏、アメリカでのプレシーズンツアー中マーシュ氏の指導に感動し、アカデミーからファーストチームに昇格させたのはロジャーズである。パスコー氏は親しい友人の一人であり、長く連れ添ったアシスタントだ。よって彼らの解任をロジャーズが自ら求めたとは考えにくい。パスコーの解任を受け、自分も辞職願を出さなかったのかと驚く声もあるほどだ。この進展に関してはオーナーが決断し、ロジャーズはこの条件を呑むか、友人らと去るかという決断を迫られたのだろう。

期待以下の最も残念なシーズンを指揮したのにもかかわらずロジャーズの続投が決まったとなれば、表面から下まで連鎖的な変化は避けられないだろう。オーナーは、これまで通りではいけない、不満を募らせているサポーターがこのままでは許してくれないと考えた。何か変えなくてはいけないとなり、もっと上層の人物に責任があるのにもかかわらずマーシュとパスコーを都合の良い失墜の犠牲にしたのだ。

とはいえ彼らの仕事の成果は出ていないのも事実。彼らの影響力はどれほどだったろう。パスコーとマーシュは失墜の要因であろう昨夏の補強には関係がない。チームや戦術、交代を決めたのも彼らではない。マーシュの練習中のコーンの置き方が、ウェンブリーでの準決勝でレッズが動けなかった原因とは思えない。なのにリバプールの不振の責任をマーシュとパスコーが取る。リバプールはエンジンが壊れているのにサイドミラーを修理しようとしているのだろうか。

シーズンレビューで、不振の原因がコーチング不足にあると締めくくられたのであれば、最初に去るべき人物はロジャーズだ。彼の長所はコーチングとされてきた。アシスタントらに練習を任せ、全体の監督をする指揮官もいるが、ロジャーズはそういう監督ではない。直にコーチングし、すべてのセッションで自らの手で指導し、自分のコーチングスキルを発揮したいという監督だ。"飼い犬をしつけるように、私は選手を教育する"なんて言っていたこともある。

しかしFSGが彼の2番手と3番手の解任を決めたということは、ロジャーズにはコーチングの助けが必要であるとファンに言っているようなもの。もし彼が一番得意とする分野で助けが必要なのであれば、なぜ監督の座に残るのか?とサポーターなら疑問を持つのは当然だ。多くのファンが違約金を支払いたくないからだと言っているが、それに反論するのは難しくなってきた。マーシュは契約満期となりお金はかからないし、パスコーの解任もそんなに高額にはならない。しかし、契約を3年残すロジャーズを解任すれば安くない上、実績ある代替の雇用が必要となる。

もうひとつ釈明するとすれば、ジェームズ・ミルナーとダニー・イングス(公に発表されてはいないがおそらく内定)との契約交渉だ。クラブは監督を変え、ターゲットの選手たちを逃すというリスクを犯したくなかったのかもしれない。監督が変わるとなれば、ミルナーはアンフィールドへの移籍を希望しなかったかもしれない。苦しい立場になったFSGはロジャーズの信頼する側近を解任し、ロジャーズを一人弱い立場に立たせ、ファンに大物のアシスタントコーチや人気の元選手が戻ってくることを期待させている。

後任候補として、パコ・アジェスタラン、レネ・ムーレンステーン、ジェイミー・キャラガー、サミ・ヒーピアらの名前が挙がっている。このなかの人物が一人でも二人でも来れば、ロジャーズにとっては大きな問題となる。勝ち目はない。来シーズンうまく行けば新たなコーチのおかげだといわれ、失敗すれば彼が責任を問われることになる。そうなれば、暫定的でも新たに就任したコーチに自らのポジションをとられるという可能性もある。

誰が来るにせよ、決めるのはロジャーズではない。ロジャーズによって雇われたパスコーとマーシュが解任となったということは彼の観方が疑問視されているということ。ロジャーズに立ち向かったり、新たなアイデアを吹き込むことのできる人を置くのはロジャーズの好みではないため、自分で指名するならそういう人は選ばない。そういうマネージメントについて、ロジャーズ"そうはならない"と発言したことがあるが、彼は考えを変えたのかもしれない、というか彼のために状況がそう変わってくれたというほうが正しいかもしれない。

アジェスタランやキャラガーの復帰をファンが求めるのは簡単。だがロジャーズが新たに指名しないなら、どうすれば本当に上手くいくのか。オーナーは強制的に新しいアシスタントをつけることもできるが、ロジャーズが考えを曲げず、フレッシュなアイデアも聞き入れないとなれば涙に終わるのは目に見えている。さらに選手やサポーターの監督対する支持が薄れてしまうリスクもある。

リバプールには似た過去の出来事がある。ロイ・エヴァンズとジェラール・ウリエを共同監督に任命した時だ。選手たちは歯車のズレを感じ、どっちつかずの状況が続き、数ヶ月でエヴァンズがクラブを去り、ウーリエが指揮を執った。実績あるアシスタントを押し付けられれば、ロジャーズにとっては不吉だろう。だがロジャーズが自分で選べるのであれば、パスコーを解任した意味はなくなってしまう。

最高のスタッフに囲まれていたいという監督もいれば、自分が一番だと言ってくれるスタッフに囲まれていたいという監督がいる。ロジャーズは間違いなく後者である。しかし今年の夏は、彼にはあまり選択肢はなく前者になるかもしれない。彼の運命を左右する夏になろう。ロジャーズにとって理想の状況とは言い難いが、この状況を彼は受け入れたのだ。


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