2015-01-09

キャリア最大のギャンブルか運命か


英紙Telegraph Sport掲載記事

どんな監督もギャンブル本能を持っている。すべきときがくればサイコロを振る。損得勘定で振ろうとはしない。自分自身を信じて振る。ジョゼ・モウリーニョの3人同時交代からホワン・マタの放出、レアル・マドリードの監督としてイケル・カシージャスの除外、あるいはサーアレックス・ファーガソンのノーマン・ホワイトサイドやポール・マグラーの放出、ディヴィッド・ベッカムやクリスティアーノ・ロナウドの世界最高額での売却のように。チームや戦術、トロフィーに加え、こういった決断力を示すことで、偉大な監督だと定義されることにつながる。

ブレンダン・ロジャーズがその節目至った。ケニー・ダルグリッシュからリバプールの監督を引き継いだ時と同じく、強い自身の意志を示した。だが、今回ははるかに重大で、大きなリスクを伴う。スティーブン・ジェラードにプレー時間が減ると告げ、移籍を許可するという決断をしたことで、ブレンダン・ロジャーズはリバプールでの自分のキャリアを明確にした。彼が自身で決めた事だ。これから彼が何をしようと、何を達成しようと、どんな成功や失敗をしようと、すべてはこのレンズを通して見られるようになる。

ロジャーズは若干41歳の若い監督だ。就任当時にはジェイミー・キャラガー、ルイス・スアレスそしてスティーブン・ジェラードがドレッシングルームにいた。だが来シーズンからはそのうち誰もいなくなる。スアレスの移籍は仕方ない。だがキャラガーを出し、さらにジェラードもチームではなくクラブから出すことは、仕方ないで済むことではない。だがキャラガーは出場機会が減るとなり、コーチングの役をオファーされなかったか合意しなかったために、すでにクラブを去ってしまっている。さらにジェラードが今シーズンいっぱいで去ることになる。

大きな何かが終わりつつある。リバプールが成功を目指すのであれば、彼らの後任をみつけなければならない。重要性がいかにしろ、生え抜きの選手の不在は、懸念されている。ジョン・フラナガンがキャラガー2世になれるのか、アカデミーの18歳ジョーダン・ロッシターが次世代のジェラードなのか、あるいは彼らに近い存在になれるのか、と。ロジャーズは、ジョーダン・ヘンダーソンやまもなく契約にサイン予定のラヒーム・スターリングを大絶賛しており、ダニエル・スタリッジもその一員になりそうだ。彼らの成長を加速させ、ピッチ上のリーダーとなるチームの中心選手をみつけなければならない。だが来季からリバプールの中心的存在となるのはロジャーズだ。ジェラードではない。


もしかしたらそうなる運命だったのかもしれない。あるいはそうあるべきだったのかもしれない。マンチェスター・ユナイテッドのファーガソン、チェルシーのモウリーニョ、アーセナルのヴェンゲルのように。選手がチームの中心、象徴、話題の的であるクラブは苦しむ。成功するクラブは監督が中心に回っている傾向にある。

非常に残念なのは、リバプールは昨シーズン優勝に迫ったときにはジェラードとロジャーズ両者にとって輝かしい栄光になりそうだったのに、これからクラブを引っ張るのはロジャーズだけだということ。彼は自分が指揮し、戦闘を始める完全な準備に入った。リバプールの移籍会議では、クラブオーナーが目標を定め、ロジャーズにどれだけ自由に使わせるかという議論が起こり得る。彼の運命を決めるのは来シーズンだ。今シーズンではない。

彼の運命を左右するのは今シーズンになるように思えた。プレミアリーグを2位で終え、チャンピオンズリーグ出場権を得て、スアレスを放出し、チームを立て直すためにマリオ・バロテッリを獲得し、£1億を使い、自身も契約を延長した。ロジャーズのシーズンになるチャンスはあった。しかし思い描いていたようはいかず、リバプールは苦しんでいる。

チャンピオンズリーグは無残な失敗に終わった。近頃改善の兆しはみえるとはいえど、欧州の舞台では昨シーズンの勢いは再現できず、獲得した選手たちはロジャーズに疑問を持つほどの期待外れ。ジェラードの退団が決まったことにより、これまでの変遷がまた新たな変遷に発展するシーズンになった。たとえリバプールが今季タイトルを獲得できなくても、トップ4に届かなくとも、ロジャーズはリバプールに残留することになるだろう。クラブはどんどん変化し続けているが、ロジャーズがこの変化を見守る立場にある。他の誰かでは不条理だ。

FSGはロジャーズに投資しなければならないし、これまでも実際投資している。だがロジャーズは来シーズンはその信頼に応えなければならない。リバプールのチームの核を外すという決断を正当化する必要がある。彼のチームとクラブに対するビジョンが正しく、そしてベストなものであり、成功をもたらすものであるということを証明しなければならない。

個人的な見解では、ジェラードを退団させてしまうのは間違いだ。ジェラードは11月ではなく昨シーズンの終わりに新契約をオファーされ、サインすべきだった。それが素早く行われなかったために、すべてのことが早すぎるスピードで起きてしまっている。しかしながら、ロジャーズがベンチで過ごす時間が増えるとジェラードにいずれ告げるつもりでありながら、ジェラードを逃さないような特別優遇をしていたとしたら、それは言い訳できない大きな問題になっていただろう。

ロジャーズは、本気でジェラードのプレーが減る、あるいは新たなぴったりのポジションがないと確信しているのだろうか?ジェラードは、司令塔あるいは3バックの前のリベロ役にはもってこいの存在に思えた。ジェラードがその役を望まなかったのかもしれないし、その役を頼まれていないかもしれないし、彼がその役ができないと感じたのかもしれないし、キャプテンファンタスティックやキャプテンアメリカとしての存在感を維持したいと思ったのかもしれない。

ロジャーズの決断力を非難することはできない。彼が下調べをして出した決断だ。彼の目標を見据え、出した答え。彼はチャンスをとらえているだろう。しかし、それより彼は今後すべてをしっかり正しく行う必要があると自覚しなければならない。ロジャーズはサイコロを振ったのだ。

Jason Burt Telegraph

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